廣島陸軍被服支廠とは



市民の動き

2019年12月2日、広島県は、耐震強度が不十分であり、維持管理のための財源が確保できないという理由から、4棟のうちの3棟を管理する広島県は、1棟のみを残して残りの2棟を解体する方針をまとめました。

それを受けて、市民から保存を求める声が相次ぎました。

被服支廠に熱い想いを抱く福岡奈織さんら社会人女性有志が結成した「旧広島陸軍被服支廠倉庫の保存・活用キャンペーン」(現・被服支廠キャンペーン)は、12月10日にオンライン署名サイト「Change.org」で署名を立ち上げ、1週間で県内外から1万1907筆もの賛同を集めました。

他の市民団体なども、以前から様々な取り組みを行っていましたが、解体方針を示したことを契機に大きな注目を集め、市民レベルの動きもより活発になりました。被服支廠に関する様々な情報(見学会などのイベント情報、メディア報道、様々なご意見等)を収集し、まとめて発信することを目的に、2020年6月に市民有志により被服支廠の情報まとめサイト「Hihukusho-LAB」が立ち上げられました。

この「Hihukushoラジオ」も、そうした運動の中で立ち上がったものの1つです。

2020年6月30日に第1回をYouTubeに公開し、それ以降、毎月15、30日に公開してきました。

2022年2月には、国際交流奨励賞を受賞しました。

2022年には、広島市立大の国際学部3年(当時)の佐藤優さんが学生グループ「ヒロシマ・ヤング・ピース・ビルダーズ」を立ち上げ、被服支廠を舞台とした物語『8月のウサギ〜被服支廠物語〜』を創作し、朗読劇・紙芝居に仕上げました。


広島県の対応

こういった様々な動きを受け、広島県は2021年2月12日、国による重要文化財の指定に向けた調査が必要との認識を表明。5月15日には、県が所有する全3棟を耐震化する方針を固めました。概算工事費は1棟当たり5億8千万円で、内装工事はしないこと、耐震化した後でも追加工事をすれば、会議室や博物館などに一部や全面を使えるようになることを示しました。

 

また、その約1年後の2022年5月19日には、財務省中国財務局が、国が所有する1棟を耐震化することを発表。これにより、現存する4棟すべてが耐震化されることとなりました。

 

報道各局も、これについて「4棟すべての事実上の保存が決まった」と報じました。

しかし、広島県は「耐震化をする」とは明言したものの、「保存する」とは明言していません。つまり、「耐震化はするが、保存するかは別問題である」ということです(実際、本当に保存が決まったのであれば、「事実上」という言葉を使う必要はありません)。

 

そんな中、2023年12月6日に開かれた県議会の総務委員会で、活用イメージを公表。1号棟(13番庫)は広島市に無償で譲渡し、平和学習などの拠点として展示室や収蔵庫、講話会場などへの活用、2〜4号棟(12〜10番庫)は図書館やマルシェ、シェアオフィスなど文化や芸術、生涯学習の拠点のほか、ホテルやコンベンション施設、飲食施設といった宿泊、観光の拠点としての活用を想定しているとのことです。

 

2024年1月19日には、国の重要文化財に指定されました。

 

ただ、利活用するからといってなんでもやっていいというわけではありません。改装した結果、被爆の痕跡がなくなってしまったり、戦時中の雰囲気を感じることが困難になってしまっては、国の重要文化財に指定した意味や価値がなくなってしまうのは、言うまでもありません。

 

今後も、広島陸軍被服支廠に対する広島県の動きを見守っていくことが大切です。